この記事はダムアドベントカレンダー2020の21日目の記事です(絶賛遅刻中)。 adventar.org
近年の多くのダム工事では、主に周辺地域や流域住民への理解促進や観光資源としての活用を目的に工事現場の見学会が開催されています。 群馬県の吾妻川で2020年4月に運用が開始された八ッ場ダムでは、「やんばツアーズ」と称した工事現場の見学ツアーを実施して、2017年度と2018年度に延べ8万4000人の見学者を受け入れています*1。 現在施工中のダムでは、三重県の川上ダム*2、福井県の足羽川ダム*3、秋田県の成瀬ダム*4、島根県の波積ダム*5などで個人向けの見学会が実施されています。
本稿では、筆者が去る12月20日に参加した川上ダム工事現場見学会で印象的だったところを紹介したいと思います。
真下から眺める堤体上流側は巨大です。 ダムなんだからそりゃ巨大でしょと思われるかもしれませんが、ダムにしてもやたら大きく見えます。 ダムに設置されている堤体下流側の公園で真下から眺めるのとはまた違う迫力がありました。 垂直だからでしょうか…?
奥に(手前にもありますが)立っているタワークレーンは、堤体の材料であるコンクリートを運搬するためのクレーンで、川上ダムでは自動運転の実証実験が行われています*6。 タワークレーンの自動運転システムは、細かい位置合わせができないため、最終的には人が介在しているようです。 また、移動速度が遅い都合から、コンクリートの打設面積が小さくなる、堤体上部での工事から使われているとのことでした。 ポスターに掲載されているシミュレータ画面を見ると、タワークレーンにはLiDARも搭載されているようですね。 AI方式はプレスリリース等もなく詳細不明ですので、どのようなシステムなのか非常に気になりました。
タワークレーンは自動運転中も旋回体の運転室で運転者が監視していて、運転者はマストの途中までゴンドラ(次の画像の赤い箱)で昇降するそうです。 手前の銀色のトラスがゴンドラのレールのようですが、なかなかの細さで不安になりますね。 風が強いと揺れるんだろうなあ…。
このでっかい溝は選択取水設備を取り付けるための溝です。 堤頂部でコンクリートを養生するために流している水が、溝の中を雨みたいにキラキラ流れていてきれいでした。 選択取水設備は、ダム湖内の任意の水深から取水するための設備です。 ダム湖内は深さによって温度や濁り具合が違うので、下流への影響を避けるためにいい感じの水深から取水するんですね。
この4台は、先端の棒を生コンに突っ込んで振動させて締め固めるためのバイバックと呼ばれる重機です。 川上ダムではバイバックも自動化の実証実験が行われていて、おそらく左の画像の手前側(バイバック3号機)が自動化されている機械だと思います。 プレスリリースによると自動化というよりは締固めの自動判定なのですが、それだけのためには取り付けられているセンサが大げさに見えるので、実はもっと高度なことをしているのでは?とつい勘ぐってしまいます。
堤体下流側では減勢工の工事が進んでいます。最後に真ん中のクローラークレーンを出したら仕上げるそうです。 建設所の方によると、ダム完成後も堤体下流側には訪れることができるそうです。 完成してからまた見に来るのが楽しみですね。
*1:https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000753892.pdf
*2:https://www.water.go.jp/kansai/kawakami/joho/kengakukai/index.htm
*3:https://www-1.kkr.mlit.go.jp/asuwa/about/index12.php
*4:http://www.thr.mlit.go.jp/narusedam/visit.html
*5:https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/river/kikan/hamadakasen/jigyoushoukai/tsuchikawachisuidamu/damukojiken.html
*6:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20191217_1.html